卒寮生の声

interview

大学でつまずき、自信を失ってグッドにやってきた元寮生のA(男子・入寮当時20代前半)。周りの人の力を借りながら、だんだんと大学に通えるようになっていった。

そんなAが、寮で生活していた頃のインタビューです。

あの頃の自分

いま返せば、 高校まではまあまあ普通にやっていたのかもしれない。 学校には毎日行っていたし、文化系の部活にも所属し、 友達もそれなりにいた。 受験勉強も頑張って、志望大学にも現役で合格。 今考えると、順調だったのだ。

歯車が狂い始めたのは大学に入ってから。 高校とは、 まるで様子が違う。 所属するクラスもなく、友達もできなかった。 大学という新しい環境に適応できなかったのだと思う。 授業が始まってみると、 孤独感はますます強くなる。 居場所がないのだ。 少しずつ欠席が増えていく。 たくさんの人の中に1人でいることが、何より辛かった。 逃げるように夏休みに入った。 外に出る気力もなく、家族とも口を利かず、 部屋にひきこもる。 単位はほとんど取れていなかった。

夏休みが明けてから、僕は、学校へ行くふりをし始めた。 もう学校に居場所はない。 かといって、それを両親に切り出す勇気もない。 電車の始発駅と終着駅とをひたすら往復し続けた。 車内ではひたすらスマホゲームに没頭する。 あっという間に時間が流れる。 学校から留年の通知ハガキが届いてそのことが家族にばれたのは、 1年半も経ってからだった。

気持ちを奮い立たせ4月から再び通い始めたけれど、 GWまで踏ん張って、 やっぱり行けなくなった。 そして、 またゲームの日々・・・。 心配する母の勧めでいくつかの自立支援団体のプログラムを転々とする。 でも、 どれも親を安心させたいから行っていただけ。 自分が変われるなんて思ってもみなかった。

一度できた習慣を一人で変えるのは、
すごく難しいことだった。

迷って参加を決めたキャンプ

そんな流れでグッドを訪れる。 週2で通い始めたけれど、 期待はしていなかった。 半年が過ぎた頃、 スタッフに夏の広島キャンプを勧められた。正直、すごく渋った。 お金を払って働きに行くなんて、信じられなかった。 だけど、それでもなぜか、 「今、行かなくちゃいけない」ような気がした。 今思えば、少しずつ自分の中で変化が起きていたのかもしれない。 広島での一週間、畑で汗を流し、 毎晩、同世代の仲間たちと語り合う。 人と関わり、自分をわかってもらえる久しぶりの感覚。そして誰かのために働く心地よさ。目標と思える人や、なりたい自分が漠然と見えたような気がした。

その後すぐのスリランカキャンプにも続けて参加を決めた。 自分にとっては信じられない心境の変化だったけど、それでも行こうって思えたのは、広島での体験と思いがあったから。 スリランカでは、村人やステイ先の家族の温かさに驚いた。 自分の中でずっと引っかかっていた、「家族」について考える契機にもなった。 夏に2つのキャンプを終えた僕は、学校に戻ろうと決意をしていた。

スリランカで見た大自然。
一生忘れられないだろう。

寮での生活がスタート

帰国後すぐに、グッドの寮に入り、落とした単位を取り戻すため、朝から晩まで友達もいない学校に通う日々。 何度も心が折れそうになったけど、寮に帰るとスタッフや仲間が迎えてくれある。 レポートとテストの山を夢中で乗り越えて、なんとか半期を終えてみると、 ひきこもっていたころに蓄えたぜい肉はすっかり落ち、 履修した科目の単位はほとんど取得できていた。

この1年半で自分に起こった変化は、 本当に大きい。 自宅にいた頃は、どうにかしてダラダラする時間がほしかったのに、今では、日々どうやって有意義に過ごすかを考えるのが習慣になっている。 事務所に集まる人たちと自然と向き合えるようになったし、 あれだけ依存していたゲームもしない。 いろんなことが辛くなくなった。 授業でも寝なくなったし、 楽しい、と思える瞬間が多くなっている。 自分がこんなふうに思うようになるなんて。 マジ、スゲーと思います。

たくさんの人に支えられて、 今、やっとスタートラインに戻って来られたことを実感しています。 

(後日談)

その後、Aは大学を無事に卒業し、社会人になるとほぼ時を同じくして卒寮。現在はかねてより興味のあった金融分野で資格を取って、社会人として働いている。ときどきグッドに帰ってくるその顔は、優しい笑顔の中に確かな自信が感じられる。

(画像はイメージであり、本人とは関係ありません。)